■支部概要

(1)関西支部の発足

 関西支部は協会の創立に4ヶ月遅れて発足した(社団法人表面技術協会の前身の金属表面技術協会時代にもすでに関西支部がおかれていた)。1950(昭 25)年6月29日午前10時、大阪府工業奨励館講堂で協会の創立披露と関西支部の発会式が行われ、大塚会長の挨拶に次いで西村秀雄氏(京大工)を支部長に選出した。同日午後1時より同所で記念講演会が行われ、大塚会長と西村支部長の挨拶に次いで武井武(科学研究所)、酒井康太郎(日本ペイント)、外島健吉(神戸製鋼所)の各氏の特別講演があった。このあと、午後6時より会場を塗料会館に移して、協会の創立と関西支部発足の披露の懇親会が行われた。参会者は、大塚会長、武井理事長、西村支部長、筑田勝二、永山栞、山本洋一、麻田宏の各理事、伊澤猛三郎監事、石田武男、石田制一、丹羽成徳、若本洋之助、川崎元雄、由上勝男、田中隆三、高瀬孝夫、外島健吉、佐藤正典、佐々木熊三、美馬善文、吉川覚の各氏であった。翌6月30日午後1時半から大阪府工業奨励館で記念座談会が行われた。座談会とは質疑応答付の講演会のことで、多賀谷正義氏(阪工大)の司会により山本洋一(日大工)、麻田宏(東大理工学研究所)、伊澤猛三郎(東工大)、石田武男(浪速大)の各氏が講演した。当時の国鉄の旅客輸送は敗戦直後の混乱から立ち直りつつあったが、東海道線の特急は2本で、朝9時に東京駅を発った燕が18時に大阪駅に着くのが一番速かった。夜行列車も寝台車付の急行は2本だけで、このような時代に協会役員のほとんどが支部発足の行事に参加したことは、関西支部発足に寄せた協会関係者の熱意を感じさせる。関西支部の事務所は、大阪市東区平野町3の日本無機薬品協会大阪支部内におかれた。


(2)1951(昭 26)年(第2期)〜 1986(昭 43)年(第19期)

 1976(昭 51)年秋から多賀谷正義氏が支部長となり、1952(昭 27)年4月1日から事務所を東区東野田町9の阪大工・冶金学教室に移した。1953(昭 28)年〜1960(昭 35)年は石田武男(浪速大後に大阪府大と改称)、1961(昭 36)年足立彰(阪大工)、1962(昭 37)年〜1964(昭 39)年川崎元雄(甲南大理)、1965(昭 40)年〜1968(昭 43)年三谷裕康(阪大工)の各氏が支部長に就任した。三谷支部長の時代は学園紛争の嵐の中にあり、1968(昭 43)年2月支部事務局は大阪市大工・応化・村上享男研究室に移転した。
 当時の支部運営については支部の記録が失われているものの、会誌の記事からあらましを知ることができる。1978(昭 53)年4月20日には日立造船所桜島工場技術研究所で第4期支部総会と講演会、見学会を開催している。総会と講演・見学をセットにするのは1964(昭 39)年以降通例となったが、それまでは総会と講演会の組み合わせが普通であった。1957(昭 32)年の総会は1月26日に大阪労働会館で行われ、多賀谷正義、武井武(慶大)、栄幸雄(新三菱神戸造船所)の各氏の講演があった。支部総会が1月末に開催されるようになったのはこの頃からである。1960(昭 35)年の総会は2月6日阪大工学部会議室で行われ、田村今男(阪大工)、緒方正明(緒方鍍金工業)の両氏が講演した。
 講演会や見学会は重要な支部の事業である。記録に残る最初の見学会は、1951(昭 26)年3月16日三輪自動車のメーカーであるはつどおうきせいぞうかぶ発動機製造鰍ナ行われた。多い年は見学会が5回も行われた。講習会も盛んであって、1958(昭 33)年2月13〜15日に大阪府立工業奨励館で開催された「最近の表面処理に関する講習会と展示会」は講演14件、見学先4ヶ所という大規模なものであった。翌年2月12〜14日にも、同所で講演18件、映画上映1件の「金属表面処理の検査に関する講習会並びに展示会」が開催され、1962(昭 37)年にも展示・講演会を行っている。1964(昭 39)年10月3〜12日には大阪国際見本市港会場で表面処理総合展(MFShow・日本工業新聞社と共催)が開催され、出展53社、62小間、講習会への参加540名を数えた。第2回表面処理総合展は1967(昭 42)年10月15〜26日に開催された。講習会や展示会が盛んに行われたのは時代の要請によるものであるが、支部財政もこれらの事業からもたらされる収入を必要としていた。日本材料学会、電気化学協会関西支部などとの共催事業も行われた。1957(昭 32)年〜1962(昭 37)年に毎年行われた溶射技術についての講習・展示会は日本溶射協会との共催による。また1964(昭 39)年〜1979(昭 54)年にかけて、支部の講演・見学会は日本溶射協会との共催で行われた。
 関西支部の定例事業である表面物性研究会(当初は金属表面物性研究会、年2回)は1966(昭 41)年にはじまった。関西支部が会誌の編集を分担した時期がある。1958(昭 33)年には支部の会誌編集委員が選任され会誌11月号を編集した。1963(昭 38)年までは支部に正規の協会職員が勤務していたが、この「支部職則の制度がなくなると会誌編集に関する記事も表れなくなる。現場パンフレット(後に実技誌)も関西支部編集号として担当し協力を行った。
 当時の支部役員についての記録は失われているが、1957(昭 32)年の支部総会では伊佐重輝(阪大工)、田村今男(阪大工)、川崎元雄(大阪府工業奨励館)、池田栄三(大阪アルミニウム)、砺波経親(大阪メタリコン)の各氏を支部運営委員に委嘱した。1960(昭 35)年は協会の10周年記念の講演会が、堺、京都、神戸、広島で行われたが、関西支部では11月18日支部設立功労者表彰を、第22回講演大会の会場である大手前会館で行った。表彰されたのは、西村秀雄、足立彰、伊佐重輝、川崎元雄、友野理平、野口正名、浜田三六、播本寛光の各氏である。


(3)1969(昭 44)年(第20期)〜2002(平 14)年(第53期)

 1969(昭 44)年伊佐重輝氏が支部長に就任し事務局を鉄鋼短大・鉄鋼工学科 に置いた。以後第48期まで支部長のもとに事務局を置くことになった。以後1978(昭 53)年〜1980 (昭 55)年林忠夫(大阪府大工・応化)、1981(昭 56)年〜1983(昭 58)年吉村長蔵(近畿大理 工・応化)、1984(昭 59)年〜1985(昭 60)年山本久(大阪府大工・金属工学)、1986(昭 61) 年〜1987(昭 62)年鷹野修(姫路大工・金属材料工学)、1988(昭 63)年〜1989(平 1)年真嶋宏 (京大工・冶金学)、1990(平 2)年〜1991(平 3)年柴田俊夫(阪大工・材料開発工学)、1992 (平 4)年〜1993(平 5)年水本省三(甲南大理・応化)、1994(平 6)年〜1995(平 7)年山川宏 二(大阪府大工・機能物性科学)、1996(平 8)年〜1997(平 9)年榎本英彦(大阪市立工研・無機 化学科)、1998(平 10)年〜1999(平 11)年粟倉泰弘(京大大学院工学研究科・事務局は京都市工 業試験場応用化学部内水谷 泰)、2000(平 12)年〜2001(平 13)年縄舟秀美(甲南大理・応化・事 務局は兵庫県工技センター機械金属指導所内西羅正芳) 、2002(平 14)年〜2003(平 15)年尾形幸生(京大エネ理工研・事務局は京都府中小企 業総合センター内松田 実)の各氏が支部長に就任した。平成16年から松岡政夫(立命館大理工学部)が支部長を、森河 務(大阪府立産業技術総合研究所)が事務局を務めている。
 1973(昭 48)年まで関西支部長は協会理事を兼 ねていたが、1974(昭 49)年(第25期)からはこれをやめて理事会には支部長として出席することに なった。第25期の関西支部役員数は、支部長1、幹事49(うち常任幹事19)であり、常任幹事のうちか ら表面物性研究会世話人3名と実技誌編集世話人12名が選ばれている。このほか西村秀雄、石田武男、 多賀谷正義の各氏が顧問であり、三氏以外の支部長経験者を元支部長として処遇することになった。
 現在、第55期(平16)の支部役員数は、支部長1、幹事61(うち常任幹事40)、会計監事(第92期より おかれた) 1であり、常任幹事のうち3名が表面物性研究会世話人となっている。ほかに顧問(支部長経験者)が 12名である。
 現在関西支部では、原則として講演会・見学会を年2回(うち1回は総会と同日開催)、表面物性研究会年2回行っている。講演大会が関西地区で開催される年は秋の行事の一部を取りやめる場合もある。 このほかに支部会員の要望に応じて、特別講演会などを適時開催している。1999(平 11)年(第50期) には、総会1回、幹事会2回、常任幹事会5回、講演会3回、見学会3回、研究会2回が行われたほか、協会 50周年を記念し、めっきの機能向上に関する研究部会および電気鍍金研究会との共催により、若手研究 者による研究発表会を7月14日(大阪鍍金会館)、12月2〜3日(ホテルアウィーナ大阪)の2回開催した 。同会は「関西表面技術フォーラム」として現在に引き継がれ、毎年12月に行われている。
 関西支部は山口を除く中国、四国、福井を含む地域に会員が分散しているので、支部活動の恩恵に与れ ない会員が多い。記録によれば1964(昭 39)年に岡山大で講演会(電気化学協会関西支部と共催)を 開催している。1991(平 3)年と1993(平 5)年には、広島中電ビルで講演会を開催したが、地元の 協力により非常な盛会であった。1999(平 11)年の第1回表面物性研究会はサンピア倉敷で開催し、 あと日本パーカライジング技術センターを見学した。
 支部の事業ではないが、講演大会は開催地の支部関係者の全面的協力によって行われる。関西地区で の講演大会は大阪市で11回(第6、8、12、14、18、22、32、50、58、74、82回)、京都市で2回 (第16、26回)、神戸市で2回(第20、42回)、宝塚市で1回(第36回)、奈良市で1回(第66回)、 堺市で1回(第94回)行われた。なお1980(昭 55)年秋には第10回金属表面技術国際会議 (Interfinish 80)と国際金属表面技術総合展が京都で開催された。

(第2回関西表面技術フォーラム講演要旨集より一部変更して掲載)

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