「最優秀賞受賞を糧として」
奥野製薬工業株式会社 総合技術研究所
長尾 敏光
第6回関西表面技術フォーラムを受賞した時のことを思い出すと今でも胸熱くなります。私は本フォーラムを学生時代から参加させていただき、今回で4回目の講演になります。毎年素晴らしい講演内容と独自のオリジナル性を生かした研究発表を聴講することで、私自身の研究や発表に取り込まれ、そして磨きをかけることができました。本フォーラムが私を成長させて頂く機会になったと言っても過言ではありません。
私の研究分野はプラスチックめっきです。本分野においては既に確立した分野ですが、昨今の環境問題が叫ばれるなか、ユーザーからはCr酸エッチング工程を用いないプロセスが求められています。今回受賞した『ABSアロイ系樹脂を用いたクロム酸エッチングフリーめっきと密着メカニズム』は、Cr酸エッチングフリーの重要性を表面技術に携わっている方々に唱えることができたと感じています。
今回受賞することによって、私が取り組んできた研究は無駄ではなかったと実感しています。心の隅にあった自分の研究に対する不安が、自信そして自覚・責任へと生まれ変わりました。今後は企業の一研究者として受賞の歓びを糧に本プロセスを実用化・工業化させ、さらに学術的にプロセスの解明を図ることが使命と感じています。そしてCr酸エッチングフリーの先駆けとして、本プロセスが自動車および日常品で使用されているABS樹脂、PC/ABS樹脂、PA樹脂etc.の代替として世間に認知され製品化となるよう努力していきます。工業化された暁には本プロセスに携わった方々とまた美酒に酔いたいと思います。