会員の声

第6回関西表面技術フォーラムを終えて

大阪市立工業研究所  藤原 裕
(表協ウェットプロセス研究部会 代表幹事)
(表面技術フォーラム 副実行委員長)

 第6回関西表面技術フォーラムが,2004年12月7日8日の両日,立命館大学びわこ・草津キャンパスにて開催され,約170名の参加者を得て39件の研究発表と1件の依頼講演が行われた。研究発表者の所属は、企業12名、大学・高専21名、国公立の試験研究機関6名というバランスの取れたものであり、また産学官3セクター中の二つ以上のセクターによる共同研究が15件を占めた。
 多岐にわたる発表内容は,現在の表面技術の研究分野および技術の潮流を反映したものになっていると思われる。発表内容をプロセス面から分類すると,広い意味でのめっき,すなわち金属系薄膜の電気化学/化学析出プロセスに関するものが多数を占めはしたが,塗装,溶射,エッチング,イオンビーム法などに広がりを見せていることがわかる。一方,研究対象になる材料は金属系薄膜に限られず,酸化物薄膜や化合物半導体薄膜,ナノ粒子などが表面技術の扱う材料として大きな分野を築きつつある。
 研究の出口,すなわち応用の側面を見ると,種々のデバイスから配線,電池までを含む広い意味でのエレクトロニクスを指向した発表が多かった。これは近年の表面技術の潮流ではあるが,特に,エレクトロニクス実装学会関西支部に協賛に加わっていただいた影響もあり,実装技術の一分野である回路形成,配線,接合に関する発表が10件を占めた。これらの分野以外では,装飾,防食をはじめとして耐摩耗性付与,抗菌性付与,金型の作製,ナノ粒子や金属基複合材料の創製,そして表面技術教育の課題に至る広範囲な応用分野の発表が行われた。
研究の出口を,応用される技術分野という切り口ではなく応用の仕方という観点で整理してみると,「表面技術=表面処理技術」であるという時代は終わったと強く感じる。すなわち,@材料の表面全体に薄膜をコーティングして新たな機能を付与するための従来からの「表面処理技術」としてだけでなく,A高機能で安価な新材料の創製プロセス,B高精度,安価かつ環境に調和した微細加工技術,を加えた3分野が表面技術の目指す方向であると宣言する時代が来たと思う。
 このことは,「インクジェットプリンティング技術による微細構造の形成」と題した立命館大学 小西聡先生による依頼講演からも強く印象づけられた。マイクロメートルレベルの3次元構造体を作成するMEMSの分野で,表面技術,特にめっき技術の重要性が増していることが明らかにされた。

 非常に多岐にわたる分野の発表が続いた2日間であったが,まったく散漫な印象が無く充実した時間が過ぎた。これはほとんどすべての発表が予定どおり約10分で終了し,すべての発表について必ず5分以上の討論が行われたためである。研究成果を簡潔にまとめられた発表者の皆様,および会場からの挙手によって数多くの深い議論・有益な討論を仕掛けていただいた参加者の皆様に敬意を表したい。このような真摯な討論を経てのみ,新しい研究分野,新しい技術のタネ,そして研究者・技術者の人材が育っていくものと確信する。関西表面技術フォーラムが表面技術分野の登竜門あるいは梁山泊となって人材を輩出し,関西発のオリジナルな研究成果の世界に向けての情報発信基地となることを期待する。

 今回は,主催団体の一つである電気鍍金研究会の創設50周年を記念した会となった。このフォーラムでは毎回3件の優秀講演賞を表彰してきたが,今回は電気鍍金研究会創設50周年を記念し,3件の内の最優秀賞を電気鍍金研究会賞とした。また,懇親会への発表者の参加を促して討論をさらに深めるために,発表者の参加費を無料とした。これらの授賞経費,懇親会経費への補助として,大阪府鍍金工業組合,京都府鍍金工業組合,兵庫県鍍金工業組合 (五十音順)からご寄付をいただくとともに,講演要旨集に13社から広告を掲載していただいた。文末ではあるが,経費面でのサポートをいただいた各団体・各社に心よりお礼申し上げる次第である。